耳コピ生活抄録(愛のメモリー、笑福亭鶴光、マルモのおきて)+α















 最近、土日というかプライベートな時間で私が行うことといえば、
1) ドイツ語の勉強をする
2) 名曲のコード進行をギター(象さん)でコピーして下手くそな歌を歌い楽しむ
3) ちょっと気が向けば、プログラミングする
4) 座ってばっかりだとさすがに体がなまるのでちょっと散歩する
くらいで、ここ一ヶ月ばかりはこのパターンに完全に定着してしまっている。「リア充極まりない週末」と他人に揶揄された時期もなかったわけではないのだが、基本的に上記のことを行なっているときに、自分は非常に落ち着くのである。
 つい最近まで、
5) 一日中、酒を飲む
6) ディスクユニオンへレコードを買いに(売りに)行く
もあったのであるが、(5)は内臓の調子が芳しくないことにより毎日は飲酒しないようにし始めたので我が休日風景からは後景化してしまった。(6)は最近ブログでも書いたとおり、ドイツロックに夢中になっていて、月末にドイツ旅行を企てており、そのための貯金をするため、誘惑渦巻くディスクユニオンに近づくことを自戒している最中であるため、後景化している。
 よって、本週末も(1), (2), (4)(※(3)はできそうになさげ。。。情けない。。)三昧で過ごしたわけである。

 さて、最近、会社の軽音部が盛り上がっている。盛り上がっている、と客観的な体で書いているが、まあ、無理やり自分が楽しみたいので、「盛り上がっている」という既成事実を作るため、そのように書いている。近日、アメリカに出向く同僚がおり、その壮行会と称して、社内バンドでの演奏を行う計画が進行しているのである。今日は、その練習のために、課題曲を3曲耳コピしたのである。その3曲とは、

松崎しげる愛のメモリー」(作詞:たかたかし 作曲:馬飼野康二)(参考
笑福亭鶴光「うぐいすだにミュージックホール」(作詞作曲:山本正之)(参考
・薫と友樹、たまにムック。「マル・マル・モリ・モリ!」(作詞作曲:宮下浩司)(参考

である。今日は、この曲たちのコード進行解析を、カバーするに至った経緯などとおりまぜて、記しておくこととしよう。



松崎しげる愛のメモリー」(作詞:たかたかし 作曲:馬飼野康二)(参考


 最近会社に加わった新入社員Kの色がやたらと黒い。タバコルームに佇んでいる姿を見るにつけ、たとえスーツ姿であったとしても、常に海パン一丁が制服であるような雰囲気を醸し出しているため、「サーファーですか?」と尋ねると「ああ、よくわかりましたね!」と常に相手を立てるレスポンスを行うことができる類まれな能力を身に着けた男、K。
松崎しげる歌うの上手いよね?」の一言から、松崎しげる愛のメモリー」を歌う計画が立ち上がった!キーはBマイナーで、途中Cマイナーへと転調するが、とりあえず、Bマイナーのところのコード進行の骨格を見てみよう。


愛のメモリー

作曲:馬飼野康二

4/4
【I】
| Bm | Bm | Bm | Bm |

【A】
| Bm | A | G | D |
| Em7 A | D G | G#dim | F#7 |

【B】
| Em A7 | F#m7 Bm | Em A7 | D C#m-F#m |
| Em A7 | F#m7 Bm | Em F#m | Bm |



 イントロはワンコードで、ピアノがアルペジオ。【A】パートは、キーがBmだが、メジャーのDスケールをトニックとして書いて相対性を見ると、1〜4小節は
 VIm(マイナートニック)→V(ドミナント)→IV(サブドミナント)→I(トニック)
と、まあ、スリーコードというか循環コード(I->VIm->IV->V)のVとIVが入れ替わった定番のコード進行であることがわかる。しかし、5〜8小節になると
 IIm(サブドミナント)→V(ドミナント)→I(トニック)→IV(サブドミナント)→V#dim→III7
と5-6小節のツーファイヴ+完全4度上昇はまあいいとして、そこから、V#ディミニッシュに移りちょっと不思議な感じを受ける。歌詞的にもものすごく切ない箇所だ。このV#ディミニッシュなのであるが、
G#dim = G#+B+D+F
であり、その前の和音がG(サブドミナント)であることを考えるとそこから半音上に行くだけで非常にスムーズでありかつ、G#dim=Fdimでもあるため、その次に来る8小節目のF#7に対してもFdim->F#7というスムーズな短一度上昇という綺麗なコード進行ができあがる。このスムーズな和声進行を成り立たせるためのディミニッシュコードの挿入が、この曲の切なさを際立たせているのかもしれない、さすがザブングルの「乾いた大地」を書いた馬飼野康二先生である。


 【B】パート1-4小節は、
 IIm(サブドミナント)→V(ドミナント)→IIIm7(マイナートニック)→VIm(マイナートニック)
→IIm(サブドミナント)→V(ドミナント)→I(トニック)


 が基本形。一回目はトニックにいかなくてマイナートニックで焦らす感じで、そのあとトニックに行く。トニック(D)の後に、
 I→VIIm→IIm
と、トニックから短一度加工したVIImを挟んで完全4度上昇して、VIIm→IIImで5小節目に繋げる。5-8 小節は、
IIm(サブドミナント)→V(ドミナント)→IIIm7→VIm(マイナートニック)→IIm(サブドミナント)→IIIm(マイナートニック)→VIm(マイナートニック)
で解決。非常に無理のないコード進行。名曲と呼ばれるものに無理なコード進行はなかったりするものである。



笑福亭鶴光「うぐいすだにミュージックホール」(作詞作曲:山本正之)(参考


 最近会社に加わった新入社員に「ビニー」というあだ名がついた。ビリビリと何らかの本を覆うVINYL素材の物質を青少年期に破っていたことに由来するという噂を聞いたことがあるが、真相は定かではない。


 2005年ごろ務めていた職場の、片腕というか相棒と呼べる同僚JMが、僕が会社を去る寸前に山本正之全曲集をくれた。現同僚のD氏と山本正之大先生の話になって、そのときの音源を会社で一日中、ひねもす流していたことがあるのであるが、そのとき「笑福亭鶴光の『うぐいすだにミュージックホール』が流れてましたよねぇ〜」と、確実に反応を示したのが、この同僚ビニーであった。同世代で、関西の出身、ということで共通点も多く、しばしば「鶴光のオールナイトニッポン」の話なぞをしてきたわけであるが、彼が本気でヴォーカリストとしての人生を歩みたい、ということで今回演奏を行う運びとなったのである! キーはAマイナー。4/4拍子。イントロはAm一発なので省略。


「うぐいすだにミュージックホール」
作曲:山本正之

4/4
【A】
| Am | Am | Dm | E7 |
| Am | Am Dm | Am E7 | Am |
| E7 | Am | Dm | Am E7 |
| Am | Dm | Am | E7 |
| Am | Am Dm | Am E7 | Am |
| Am | Dm | Am E7 | Am |



 多少異なる部分もあるが、基本的にこの繰り返し。
Im(マイナートニック)、IVm(サブドミナントマイナー)、V7(ドミナントセブンス)
を行ったり来たりする昭和歌謡曲。基本的に演歌とか昭和歌謡曲とかって、このマイナースリーコードを行きつ戻りつする曲なんだと思う。なんというか、アーメン終止とかお辞儀終止に節操無く行きつ戻りつするのが、それなんだと思う、うまく言えないが。山本正之先生はそれを敢えて引用して場末の昭和キャバレーの雰囲気を見事に演出している。
 この曲においてはコード進行というより、ギターのフィルのフレーズが魅力的で、ここをリハーサルで如何に解釈、料理するかが肝となるであろう!!



◎薫と友樹、たまにムック。「マル・マル・モリ・モリ!」(作詞作曲:宮下浩司)(参考

 
 思い返せば、少なくとも高校3年生くらいから足掛け26年くらい音楽の耳コピをしてきたわけだが、なかなか、「おお、この曲、解析してみると意外とすげぇ!」と感嘆する曲にはなかなか巡り会えない。今回、一番面白かったのがこの曲である。

 最近会社に加わった新入社員2人に「子役」(男・女)というあだ名がついた。見たまんま、子役っぽいのである。劇団ひまわりだとか、子役募集の広告に写っていたとしても違和感がないキャラクターを持ち合わせた子役たちなのだ。彼女、彼が踊って歌うためにコピー。キーはEメジャー。4/4拍子。


マル・マル・モリ・モリ!」
作曲:宮下浩司

4/4
【A】
| E A | B E | E A | B |
| E A | B E | E A | B E |
【B】
| E | G#m | A | Am |
| E C#m | A B | E |
【C】
| A B | G#m C#m | A B | C#m B |
| A B | Cdim C#m | F#m G#m | A Bb | B7 |
【A'】
| E A | B E | E A | B E |
C#m B | A G#m| F#m F#7 | B7 |
| E A | B E | E A | B E |
C#m B | A G#m| F#m B 7 | A E |



【A】パート1〜2小節目の
 I(トニック)→IV(サブドミナント)→V(ドミナント)→I(トニック)
がこの曲の核ユニットとなる。ボ・ディドリービート風に繰り返されるこの単位がグルーブを作り出す。3-4小節目はブレイクで省略されているだけ。
 【B】パート「大きくなったらお空に〜」の箇所は
 I(トニック)→IIIm(トニックマイナー)→IV(サブドミナント)→IVm(サブドミナントマイナー
 サブドミナントマイナーの挿入が憎い!カワイイ!切ない! でそこから
 I(トニック)→VIm(マイナートニック)→IV(サブドミナント)→V(ドミナント)→I(トニック)
の循環コード進行。非常に美しい【B】パート。【C】パートも美しさで負けていない!
 IV(サブドミナント)→V(ドミナント)→IIIm(マイナートニック)→VIm(マイナートニック)
と【B】後半の循環コードをIとIIImを代替することで継承しかつ、3-4小節では
 IV(サブドミナント)→V(ドミナント)→IIIm(マイナートニック)→V(ドミナント
ドミナント着地して色彩を変えておいて、5-6小節で
 IV(サブドミナント)→V(ドミナント)→bVIdim→VIm(マイナートニック)
と、V→VImのあいだに、遷移コードと呼べるディミニッシュコードを挿入することで、なめらかに、かつ物悲しくコード移行してから、7-9小節で
 IIm(サブドミナント)→IIIm(マイナートニック)→IV(サブドミナント)→IV#→V7(ドミナント
と、さらに、IV#をメジャーコードとして挿入することでドミナントに持っていく!!
 その後は、【A】の変形に戻って、どこが変形かというと5-8小節目の
 VIm(マイナートニック)→V(ドミナント)→IV(サブドミナント)→IIIm(マイナートニック)
 →IIm(サブドミナント)→II7(サブドミナントのドッペルドミナント)→V7(ドミナント
で、ここではドッペルドミナントが色彩感を変えるのに役だっており、「マルモのおきて」には、コード進行の王道と呼べる美しさが刻み込まれており、この曲はコピーして本当によかったと思ったのだ。


 そのほか、「カントリー・ロード」とかMasha Qrellaの「Fishing Buddies」を演奏する予定である。

 来週は、毎朝ほとんど9:00出勤で朝練である。僕は、アメリカに移住したケルト民族の暮らしに寄り添うアパラチア山脈ブルーグラス音楽とか、アイリッシュパブを中心にギネスを飲みながら低価格で楽しむイギリスのパブロックとか、ドイツのベルリンの壁崩壊後のロックとか、
生活に根付いた音楽が好きだ。

 どんな場所にいても音楽を一緒にできる仲間を見つけて、いつも一緒に音を出して生きていきたい。



■関連リンク:

Masha Qrellaインタビュー