「音楽美学」を読む【5】ベートーヴェンピアノソナタ「熱情」





Ludwig van Beethoven, Karl Böhm, Dresden Staatskapelle, Edwin Fischer


Beethoven: Piano Concerto No.5, Piano Sonata Nos.8 & 23




野村 良雄


音楽美学 改訂

 どんなピンチの時も「一日に10分でもいい。音楽の練習を忘れないで欲しい」。これは僕の業(=カルマ)だ。




 さてベートーヴェンピアノソナタ第23番へ短調作品57の「熱情(アッパッショナータ、Appassionata)」の冒頭4小節が、ちょっと視点を変えればキーCメジャー(=ハ長調)でのサブドミナントマイナー→トニックでの構成に過ぎないことが解った。微速漸進極まり無いが、今日は次の4小節のコード進行を検証。




 初回起こしたタブ譜と一部異なるが、コード進行は、


|12/8 Fm |Fm |C-F |C|
|Gb |Gb |Db-Gbdim |Db|


 となる。問題となるのは、第7小節目の3+4拍。ピアノ譜で構成される音は下から

  • Gb
  • A
  • C
  • D
  • Eb
  • F

 で、先日Gbmと解釈したが、Cの音(Gbに対するb5th)が明らかにピアノの左手で演奏されているので、Gbディミニッシュ(=Gb+A+C+Eb)と捉えるのが妥当かと思う。それにM7thであるF、b6thであるDが加わってビミョーな和音になっている。こういうところがベートーヴェン面白い。さて、キーをCメジャーのままとして進行を追うなれば、


IVm-I-IV-I-#IV-bII-#IVdim-bII


 ということになる。I→#IVは減五度上昇進行。#IV→bIIは完全五度上昇。bII→#IVdimは完全四度上昇。#IVdim→bIIは完全五度上昇かつ、#IVdim=Idimだから、Idim→bIIの短二度上昇(野村良雄氏の言う「導音」ね)進行と、全て、理に適ったコード進行であることがわかる。わかるのだが、コード進行を額面どおりに受け取ると、やはり奇妙な進行である。なぜかというと、キーは解りづらいのだ。なのに和声進行としてしっくり来るジレンマ。




 さて、この部分、野村良雄氏&ハンス・マイヤー氏の理論で言うとキーGbということになるが、前回と同じく、8小節目のDbでの落ち着きがあまりにフカフカ(苦笑)。キーDbとして解釈することも可能だ。キーDbで5〜8小節ブロックを見るならば、


IV-I-IVdim-I


 と、これまたサブドミナント→トニック→サブドミナントマイナー→トニックの進行に過ぎないわけで。短二度キーが上がったほぼ同進行。ただし、サブドミナントのマイナーとメジャーが反転している部分がミソ。この構造が、ウィーン楽派のソナタ形式の完成のみならず、現代ポピュラー音楽に与えた影響とは? ジョン・コルトレーンからKAT-TUN仮面ライダーまで。具体的事例を明日から調べていく。




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