モリー&テンブルック(競馬の歌)(2)





Ian & Sylvia


The Complete Vanguard Studio Recordings







The Stanley Brothers


Earliest Recordings: Complete Rich-R-Tone 78s (1947-1952)







John Stewart


Wires From the Bunker







ヌーラ オコーナー, Nuala O’Connor, 茂木 健, 大島 豊


アイリッシュ・ソウルを求めて

 「モリー&テンブルック」アイルランド生まれの民謡で、アメリカに渡って黒人・在米アイルランド人、そしてアパラチア山脈の人々のトラディショナルとなった。後のアメリカン・フォーク・ロックにも影響を与え、ジョン・スチュアート(John Stewart)や、イアンとシルヴィア(Ian and Sylvia)なども演奏している。メロディは伝承に基づくものだが、作曲者としてビル・モンロー(Bill Monroe)とクレジットされることも多いようだ。





 旋律が使用しているノートは、キーBメジャーで、

  • B(=I、ド)
  • C#(=II、レ)
  • D#(=III、ミ)
  • E(=IV、ファ)
  • F#(=V、ソ)
  • G#(=VI、ラ)

の、イオニアンスケール・マイナス・M7th(シ)、もしくは「ドレミソラ」のペンタトニック・スケール・プラス・ファ(=IV)の6音階。先日ケルト民謡の旋律が、「ペンタトニックスケールとイオニアンスケールの中間に存在している」ようなことを書いたが(参照)、その実例とも言える。




 ビル・モンローとブルーグラスボーイズの演奏がやはり秀逸。1940年代後期のブルーグラスボーイズのメンバーは、

  • ビル・モンロー(Bill Monroe、テナー・ヴォーカル、マンドリン
  • レスター・フラット(Lester Flatt、リード・ヴォーカル、ギター)
  • アール・スクラッグス(Earl Scruggs、バンジョー
  • チュビィ・ワイズ(Chubby Wise、フィドル
  • ハワード・ワッツ(Howard Watts、ウッドベース

という構成。ワッツ(別名をセドリック・レインウォーター(Cedric Rainwater)ともいう)のベース(ルート→五度→ルート→五度…の繰り返しが基本)が、



B E
+ + + + + + + +
G:-----------------|-----------------|
D:-----------------|-----------------|
A:-2-------2-------|-----------------|
E:-----2-------2---|-0---4---0---0---|
E B F#7 B
+ + + + + + + +
G:-----------------|-----------------|
D:-----------------|-----------------|
A:-----0---2---2---|-------1-2-------|
E:-0---------------|-2---2-------2---|
B
+ + + + + + + +
G:-----------------|-----------------|
D:-----------------|-----------------|
A:-2-------2-------|-2-------2-------|
E:-----2-------2---|-----2-------2---|


しっかりした2ビートの頭を打ち、モンローのフラット・マンドリンが8分音符の裏打ちを入れる。アイルランドのダンス音楽からブルーグラスに流れた基本ビートだ。フィドルは旋律のサブ・メロディを弾き、スクラッグスのバンジョーが16部音符で高速アルペジオを展開する! 




 ブルーグラスをカントリーの一種ととらえて、「多分マッタリしてるんだろうな」とお考えの皆様。まったくそうじゃないので、ビル・モンローの1940年代後期の録音を聴いてみて欲しい。険しいアパラチア山脈で培われたブルーグラス音楽は、ある意味どんなハード・ロックよりもスリリングで、力強さに満ち満ちている。




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