「音楽美学」を読む【4】ベートーヴェンピアノソナタ「熱情」


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野村 良雄


音楽美学 改訂

 引き続き、野村良雄著「音楽美学」第二章「音楽の形式」。ベートーヴェンピアノソナタ第23番へ短調作品57の「熱情(アッパッショナータ、Appassionata)」の和音構成を研究。今日は冒頭4小節だけの和声構成をじっくりと。





 冒頭1〜2小節のコードはFm(=Fマイナー)以外の何物でもない。問題は3〜4小節。ピアノ譜面も見るに3小節の1拍、2拍を構成する音は下から

  • E
  • G
  • C
  • D

 ここはコード、Cメジャー(=CEG)と見て良いだろう。Dは経過音であり、無理矢理コードに埋め込んだとしてもC9(=Cメジャー add ナインス)。まあ、Cメジャーの想定範囲内。次に3、4拍。構成音は下から、

  • F
  • A
  • Bb
  • C
  • D
  • E

 先日のギタータブ譜参照)では、低い2音(F+A)を優先してコードFと敢えて記述したが、かなり微妙である。G7とも取れる。ただし、9th(=A)、#9th(=Bb)、11th(=C)、13th(=E)などのテンションを含むものとして。だが、最後のEは4小節の先取音と捉えることが可能だ。そうすると重要な音は

  • F
  • A
  • Bb
  • C
  • D

 ということになり、F+A+DでFメジャー、それに6thであるDと、11thであるBbを加えたモノと解釈するのが妥当ではないかと考えている。




 とすると、テーマ(=主題部)の最小単位である1〜4小節のコード進行は

|12/8 Fm |Fm |C-F |C|
 という進行になる。この進行が深い。読めば読むほど深い。この曲はヘ短調(=Fm)とされているが、それもこれも、たまたま始まる部分がFmだからだ。キーFmと解釈するとコード進行は


Im-V-I-V


 ドミナントで4小節目が終わることになるが、それにしてはこのV部分(=コードC部分)は落ち着きすぎていやしないか? まるでトニックに戻ったかのように。midi で確認して欲しい。




 この落ち着き方は変だ。そうなのだ。トニック=Cと考えてみればよいのだ。そうすると。


IVm-I-IV-I


 コード進行解析で幾度となく指摘してきた

 が現れる! 続きは明日。




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