「音楽美学」を読む【12】大林宣彦「綾子のテーマ」
伊藤歩主演 上海恋香~shanghai Lianxiang~ 伊藤歩 in shanghai 水の旅人-侍KIDS- |
前回、ケルトに行き着いたところで一旦「サブドミナントマイナーの旅」を終える予定であったが、もう一度、宮部みゆき原作&大林宣彦監督映画「理由」の舞台、東京都足立区へと舞い戻る。伊藤歩嬢が演じた宝井綾子のテーマ音楽、「綾子のテーマ」だ。キーはCマイナー、4/4拍子。
コード進行は [A-1] Im-bIII-bVIM7-IVm-Im トニックマイナー(Im、bIII)→サブドミナントマイナー(bVIM7、IVm)→トニックマイナー(Im)の構成で、これもまた「トニックマイナーとサブドミナントマイナー」だけの世界。現代の孤独を象徴するような(←手垢の付いたよーな表現)青年・八代祐司(演:加瀬亮)を愛してしまい、彼の「奥さんにだって、お母さんにだってなってあげる」(大意)と語った綾子の寂しいプライドを見事に表現するような楽曲だ。演じた伊藤歩嬢は、そうだ、大林宣彦氏の映画「水の旅人 −侍KIDS−」に出ていた女子高校生だ。web を見ていて思い出した。 幼少〜青年期にかけてピアニストを目指していたという、大林宣彦氏の作曲作品(DVD の特典で、脚本に残された氏のメモ譜面が映されており、氏は「現場の空気が音楽になる」と語っている)だが、音楽監督を、「花より男子」の山下康介氏が担当し、上品で叙情的な楽曲に仕立て上げている。 足立区周辺は色んな都合があって、学生時代よく出かけていった。”都市”は4角形から成り立つ。4つの角は”都市”の機能を象徴している。
「労働力の受け入れ口」にやってきた流浪の民は、「人足寄場」(=立ちん坊をして日銭を建築現場で稼ぐ日雇い労働者の町、山谷、泪橋は「あしたのジョー」で有名)で職を得て日銭を稼ぎ、その金で「歓楽街」で飲み食い遊び、「売春街」で性欲を満たす。都市にはこの4角形の角が隣接する場所が必ずあるのだ。大阪ならば、
ということになる。コード進行に当てはめると、
といったことろか(何でやねん?)。これは現代にいきる我々の「まち」を象徴する4角形と考えてよい。 ■関連記事:前回 宮部みゆき&大林宣彦「理由」 |