「音楽美学」を読む【19】フィル・マンザネラ「ダイヤモンド・ヘッド
Phil Manzanera Diamond Head |
私が未だに愛している坂元輝氏&菅原秀氏共著「ポピュラー&ジャズ実用用語辞典」。コード進行に関して、かつて引用したこの例え話は非常によくできていると思う。
最近私がハマっている宮部みゆきが描く世界と重ね合わせて、「理由」ならば、石田直澄氏の「マイホーム=財産(=T)」に向かうコード進行を、「火車」ならば、新城喬子嬢の、「親の借金を清算すること=自分の出自を消去すること(=T)」に向かうコード進行を、「R.P.G」なら一美のケーデンスを考えてみる。どれも解決しない曲なのかもしれないが。
毎度お恥ずかしいアレンジだが、コード進行は、 V-IV-I-bVII-IV-I ドミナント(V)→サブドミナント(IV)→トニック(I) サブドミナントマイナー(bVII)→サブドミナント(IV)→トニック(I) となっており、1小節冒頭と3小節冒頭の「ドミナント」と「サブドミナントマイナー」の対比が見事なコントラストを形作っている。 フィル・マンザネラはロキシー・ミュージック参加前はカンタベリー系のジャズ・ロックバンド、クワイエット・サン(Quiet Sun)に参加していた。このバンドからはディス・ヒート(This Heat)のチャールズ・ヘイワード(Charles Hayward)、マッチング・モールのビル・マコーミック(Bill MacCormick)らが在籍していた。「ダイヤモンド・ヘッド」には私が愛してやまないロバート・ワイアット(Robert Wyatt)ほか、イーノ(Eno)や、元キング・クリムゾンのイアン・マクドナルド(Ian MacDonald)、ジョン・ウェットン(John Wetton)、女性ヴォーカリスト、ドーリン・シャンター(Dooreen Chanter)らが参加しており、各人が色とりどりな曲を提供している。マンザネラは最近のロバート・ワイアットのアルバム(クックーランド:参照)にも参加していたりする。素敵なミュージシャンだ。スパニッシュの血のもとに生まれ、カンタベリーを経て、マンザネラがたどり着くダイヤモンド・ヘッドの風景が、このケーデンスで描かれているように思う。 |