「音楽美学」を読む【20】ビル・モンロー「ブルーグラス・ブレイクダ
Bill Monroe The Essential Bill Monroe & His Blue Grass Boys |
「サブドミナントマイナーとトニック」の単純な世界が何を生んだ?。ロック? そう、ロックだ。ロックはエルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)が、黒人デルタブルース「ザッツ・オールライト・マ(That's All Right, Ma)」(by アーサー・クルダップ、Arthur Crudup)と、ケルト民謡をアパラチア山脈で醸造したブルーグラスの名曲「ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー(Blue Moon of Keytuckey)」(by ビル・モンロー、Bill Monroe)これはエルヴィス・コステロの言にも示されるととおり、真実だと思う。 ビル・モンローを初めて聴いたときは衝撃だった。特に、1940年代のブルーグラス・ボーイズの面子。アール・スクラッグス(Earl Scruggs)とレスター・フラット(Lester Flatt)のいた時代の演奏。ものすごい速弾き。弦楽器をメインとしてコレほど高速な演奏から成り立ったバンドを聴く機会はブルーグラスというジャンル以外には無いんじゃないかと思った。 「ブルーグラス・ブレイクダウン(Bluegrass Breakdown)」というインストの名曲がある。キーはGメジャーで【A】パートのコード進行は、 【A】
I-bVII-I-bVII-VI-I トニック(I)→サブドミナントマイナー(bVII)→トニック(I)→サブドミナント(IV)→トニック(I) という構成。単純なコード進行を軸に、各弦楽器奏者が高速フレーズを競うという構成で、重々に”ケルト”と”ロック”の気質を感じる名曲。 ロックのアドリブで I-bVII-I のコード進行を使うケースが多々あるが、その元祖とも言える構造だ。ケルトと黒人音楽の出会いからロックは生まれた。「サブドミナントマイナーとトニック」の世界は、確実に様々な音楽文化を新規に生み出していく。続く。 ■関連記事:前回 |