宮城道雄「春の海」





宮城道雄


宮城道雄

 お正月。あけましておめでとうございます。お正月ということで、ヘビメタさんにてマーティ・フリードマンも演奏していた、宮城道雄作曲の筝曲「春の海」を弾いてみよう。マーティのプレイも参考にしつつ、原曲の冒頭をなるべく忠実にギターで弾いてみる。



Andante
Em
+ + + + + + + +
e:-----------------|-----------------|
B:-----------------|-----------------|
G:-----------9-----|--------79-9-----|
D:-2--0-797--9-----|-2--0-79---9-----|
A:-2-2/7---7-7-----|-2-2/7-----7-----|
E:-0---------0-----|-0---------0-----|
Em G Em
+ + + + + + + +
e:-----------------|-----------------|
B:---------8-------|-----------------|
G:79---------97----|-----------------|
D:-9-----------9-7-|-9---------------|
A:-7---------------|-----------------|
E:-0---------------|-----------------|



 キーはEマイナーで、旋律に用いられているノートは、

  • E(=I、ラ)
  • G(=bIII、ド)
  • A(=IV、レ)
  • B(=V、ミ)
  • D(=bVII、ソ)

※「ラ、ド」などは、主音を仮想「ラ」と定義した場合のスケール。


の五音階で、マイナー・ペンタトニックスケールそのものに値する。「二六抜き」とも呼ばれ、日本古来の「都節音階(=ラシドミファ)」、「陽旋法(=ラシレミソ)」、「陰旋法(=ラシbレミソ)」とは異なり、大正〜昭和に日本に輸入された西洋音楽スコットランド民謡を主とした童謡)から日本が抽出し、定着させた五音階である(参照)。




 実際、この曲は宮城道雄氏によって1930年(昭和5年)、宮中で行われた新年の歌会のために作曲されたもので、筝と尺八二重奏のための曲。上記のフレーズは第一楽章 Andante 「のどかな春の海辺」の冒頭4小節にあたり、舟に打ち寄せる波の音+カモメの声など、氏が瀬戸内海を紀行したときに見た、長閑な春の海を描いたものといわれている。




 和声的にはEマイナー一発で問題なさそうだが、例えば一小節の(1.5拍〜)2拍目、ノートが、

  • B
  • D
  • E
  • A

である部分、これらの構成音から、コード

  • Bm7(=B+D+E+A)

ドミナントを代入しても成り立つ。しかしコレの完全五度上昇→完全四度上昇を盛り込むと、あまりにコード進行の輪郭がハッキリと出てしまい、”長閑でマッタリした海の情景”が損なわれてしまう印象を受ける。そこで、

  • D69(=D+F#+A+B+E)

あるいは、

  • D7 9 13(=D+F#+A+C+E+B)

サブドミナントマイナーを代入してみると、マッタリ感を損なうことなく、コードアレンジ(=色彩感を違えること)ができると思う。ドミナント部分をサブドミナントマイナーで代用するという利点はこういう効果があるのではないかと考えている。




 とまあ、お正月も「サブドミナントマイナーを巡る旅」は終わらず、ということで。では、今年も宜しくお願いします。




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