高幡不動尊の”お護摩”










 もう先週の日曜日のことになるが、高幡不動尊へ厄除に言ってきた。私は数えで今年42歳、男の本厄なのである。家族で車で行ったのであるが、丁度”あじさいまつり”が開催中であったらしく、駐車場がメチャ混みである。警備員のオジサンが駐車しようとする私と妻に聞いてくる。「あじさい祭り目的でお越しですか?」


 「いえ、厄除けのお払いを…」「そうですか、では駐車してください」と警備員。


 なるほど、あじさい目的の場合、”確実にお金を落とす客”ではないから、遠くの駐車場あるいは、有料駐車場へと斡旋しているようである。シッカリしている。




 駐車場に車を停めて、事務所らしきところへ向かう。厄災除は、”お護摩”で行なうという。”おごま”。この齢になるまで知らなかった言葉である。

護摩とは、梵語でホーマ(homa)といい、
〈焚く〉〈焼く〉などの意味をもつことばで、
仏の智慧の火を以て煩悩(苦の根元)を
焼きつくすことを表します。

御本尊(不動明王)の前に壇を設け、
さまざまな供物を捧げ、
護摩木という特別な薪を焼きつくし
御本尊に祈る真言密教独特の修法で、
たいへん霊験あらたかであると
云われております。
高幡不動尊金剛山
  ホームページより引用)



 なんだか、すごそうである。今年は目が回るほど仕事に追われている。同時にツイていない。厄災除して欲しかった。




 事務所には山あじさいの花が活けてある。とても綺麗である。濃い紫、淡い紫、ブルー、水色、濃いピンク、桃色…………こんなにいくつもの種類があるとは知らなかった。花弁の仕様も微妙に違っている。


 お護摩は13:00から、本堂にて行なわれると言うので向かう。10分前ほどについたが、もう2〜30人程度が集まっており、若いお坊さんの「説教(?)」を聞いている。お坊さんの話は、今まで自分が出合ってきたお坊さんよりも、非常にスムーズかつ、滑舌が最高に良い。まるで若手芸人の前説を聞くが如しである。


 かといって、内容がない話をしているわけではない。合掌とは、蓮の花を手のひらでシミュレートしたものであり、蓮の花から仏が生まれるのだから、つまり、合掌とは自分のなかから仏を生むって行為なのだ、という、ヒジョーに深い話をしている。サービス精神に溢れたお寺である。実にシッカリしている。






 13:00、お護摩が始る。CD音源の雅楽・越天楽がスピーカーから流れる。スピーカーの品質が悪く、音が割れているようなことは決してない。充実した音響設備まで整っている。シッカリしている。


 坊さん達がひとりひとり、声明を唱えながら登場してくる。音域は皆さん、基本ユニゾン。たまにオクターブ違いがいる。なんかところどころで一音下にいったり、半音スレたり、5度、4度の音程も混じる。倍音がバシバシ出ている。おお、ホーミーみたいやないか。。


 そしてタイコが加わる。基本エイトビート。熱気に満ちた演奏だ。一番偉い坊さんが護摩木を手にし登場、火にくべて燃やし始める。前に立ちはだかる不動明王像! 




 おおおおお。


 マジ、カッコよ過ぎね? 


 インド音楽とハードロックと、ブライアン・イーノと、トーキングヘッズと、ホーミーの融合じゃね?




 思わず、ケータイでその場の音楽を録音してしまう。リズムセクション、太鼓のビートをベースリフ化にすると、↓な感じだ。キーはCメジャー、4/4拍子に聴こえる。


作曲:真言宗智山派
コピー:dukkiedukkie

C9 F9
+ + + + + + + +
G:-----------------|-----------------|
D:/5-------5-5-5-5-|-3-3-3-3-3-3-3-4-|
A:-----3-3-3-5-3-5-|-3-3-3-3-3-3-3-3-|
E:-----------------|-----------------|

 って感じだ。キーはメジャーなのかマイナーなのかハッキリしないが、それがいいのだ。なんとなく、C9って感じだ。ここに声明が、


作曲:真言宗智山派
コピー:dukkiedukkie

C9 F
+ + + + + + + +
e:-3---3---3---3---|-3---3---3-3-3---|
B:-----------------|-----------------|
G:-----------------|-----------------|
D:-----------------|-----------------|
A:-----------------|-----------------|
E:-----------------|-----------------|

 って感じでヴォーカリーズする。ま、お経なのだが。そしてたまに、鈴らしき音がチリンチリンとなって、パーカッシヴな効果と高音域のアクセントを入れる。




「これはひとつのSHOWじゃねぃかっ!」




 興奮のライブが終わり、偉いお坊さんのお話が入る。 偉いお坊さんは、川澄祐勝というかたで、「叱られる幸せ」と言う本を出されているようだ。NHKの「ラジオ深夜便」で語られたことを書籍化したもののようだ。シッカリされている。




 私は、仏の道からは程遠い俗物である。なんとなく想像するのであるが、この高幡不動尊のようにシッカリ・チャッカリして、まるでSHOW、ビジネスのような活動を展開するお坊さんは、お坊さん業界で「ああ、彼は生臭坊主ですよ」みたいに悪く言う敵もいるんじゃないかと。単なる無邪気な憶測であって欲しいのだが。


 だが、私は、断固として思う。仏門に身をおく立場でなくても思う。




 お坊さんも、ビジネスをわかっていないと、人に教えたりすることなんて絶対できない、と。このようなお寺は、絶対正しいことをやっているのだと。じゃなくちゃ、こんなに楽しいSHOWを見せてくれるわけがない。心躍るお護摩となろうはずもない。もし、今年一年、厄が払われず、ツイていない事態が今後、連発したとしてもだ。私は、高幡不動尊の"お護摩"は楽しかったなぁ、と思いつづけるのだ。それはとてもいいことじゃないか。



 高幡不動尊は、ホームページもシッカリしている。デザイナーに発注して作ったのだろう。かけるべきところにお金をちゃんとかけている、ビジネス・センス溢れる寺である。


■関連リンク:
高幡不動尊 金剛寺


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