ドラマ「花より男子」に流れたロッド・スチュワート





Rod Stewart


Blondes Have More Fun

 情けなく言い訳ばかりしているが、ちょっと色々あって(参照1参照2)書く”ゆとり”(←人生で1番大切なものだ!)が無かったのだが、11月11日放映の「花より男子」(ジャニーズ松本潤主演)第4話、クラスメートに誘われてクラブに行った牧野つくしは、ホストのリュウジにナンパされて、下着姿の写真を学校に張り出されてしまう。ドラマではとっくに解決がついていて、「今頃なんだこのオヤジ」と思われるのが関の山なのだが、このホストのリュウジを演じていたのが、元仮面ライダー555ファイズ)であり、ウルフ・オルフェノク(→仮面ライダー555は、怪人でありかつ、ヒーローであるという二律背反を映像上明確に提示した偉大なる石ノ森章太郎イズムのドラマであった)を演じた半田健人氏であった。




 そして、その半田健人氏が、井上真央嬢(=つくし)をナンパするシーンでBGMとして、かかっていた曲が、ロッド・スチュワートRod Stewart)が1978年に発売したアルバム「スーパースターはブロンドがお好き(Blondes have More Fun)」からのシングル・カット曲、「アイム・セクシー(Da Ya Think I'm Sexy?)」だ。




 結論から先に言う。””、”セックスsex)”、”セックス・シンボル”、”セックス・アピール”という記号は資本主義社会においては意外と脆く、適当で偶然の産物に過ぎなく、たいした記号ではないということ。それは、ヒトに、コンプレックスを植えつけはするのだが、実はDNA、生態系とは離れたちっぽけなものに過ぎない。資本主義社会で一般的に言われるそれは観念であり、偏見であり、概念ではないということ。ロッド・スチュワートは「ブロンドが大好きでウハウハなスーパースター」では無いと自分が思っていること(しかし「スーパースターはブロンドがお好き」は計算済みなのか否か、本当にバカげたタイトルだ。そんな作品をつけられた本人の思いはどんなもんだろ?)。半田健人は「女子高生をナンパして、下着姿にひん剥く役を、仕事(=賃労働)のために、しょうがなく演じている」ということ。




 ロッド・スチュワートはよく、「初期(1960年代〜1974年)は、スティーム・パケット(Steam Packet、ジュリー・ドリスコールがいた)や、ショットガン・エクスプレス(Shotgun Express、ピーター・バーデンス、ピーター・グリーンが在籍)や、ジェフ・ベック・グループ(Jeff Beck Group)や、フェイセズ(Faces)時代はロッカーだったのになぁ。。。。『スーパースターはブロンドはお好き』のあたりから、アメリカに渡って、ロッカーじゃなく、ビジネスマンっちゅうか、ショーマンになってロック魂を失ったよね。レコード会社に媚びているというか。彼自身、スコットランド出身で被差別民族であるケルト族(参照)出身だし、初期ソロ・アルバムには『マギー・メイ』とか、浅川マキがコピーした(故吉沢元治氏がベース。吉沢さん、本当にゴメンナサイでした、騒ぎすぎました)『ガソリン・アレイ』とか、彼のケルトのルーツを表明したような曲が入ってんだけどね。いや、商業主義に迎合してしまったねぇ…。1975年以降、アメリカに渡ってからの作品はダメ。『スマイラー』までしか聴いていない」などと語られることが多い。いや、私はそう思っていた、まっさきに私がそうだったのだっ!!!!。正直、10年ほど前まで。すみません。ロッド先生。確かに以上の偏見は半分はあたっているが、半分は外れている。





[Bass]
Gm Bb C
+ + + + + + + +
G:-----------------|-----------------|
D:---5---7---8----8|-8-8-------8---7-|
A:-----------------|-----------------|
E:-3---5---6-----6-|-6-------6---5---|
[Guitar]
Gm Bb C
+ + + + + + + +
e:----/17--13------|--/15----151212--|
B:----/18--15------|--/15----151313--|
G:-----------------|-----------------|
D:-----------------|-----------------|
A:-----------------|-----------------|
E:-----------------|-----------------|




 上記、フィル・チェン(Phil Chen)氏のベースとジム・クリーガン(Jim Cregan)氏のリズム・ギター。「アイム・セクシー」間奏からの引用だ。1970年代後半の当時、流行していたディスコ・サウンドを意識しまくった演奏だ。フィル・チェン氏は中国系のイギリス移民(間違っていたらすみません、フィル様)で、ジェフ・ベックの「ブロウ・バイ・ブロウ(Blow By Blow)」や、ゴンザレスなどでベースを弾いていいたセッションマン。ジム・クリーガンは、ブロッサム・トゥズ(Blossom Toes)でギター、ヴォーカルを担当、その後スタッド(Stud)やファミリー(Family)に参加したギタリスト(ジャマイカ系の歌姫、リンダ・ルイス(Linda Lewis)と結婚していた時代があった)で、おそらくケルト系と思われる。




 ハッキリいうが黒人の本家ファンクやディスコほど巧く出来た16ビート系の音楽ではない。そう、スコットランド出身のアヴェレイジ・ホワイト・バンドAverage White Band)がそうであるように。しかし、そもそもノリとは、ビートとはなんなのか? 正確ではないビートであるが故に、生み出されるノリというものがある。アヴェレイジ・ホワイト・バンドもそうだ(しつこくてスマン)。何が言いたいかというと、実はロッドは魂を売っていないのだ。ちっともブルジョワ志向じゃないのだ。アメリカで結成したロッド・スチュワート・バンドのメンバーには、ビリー・ピーク(Billy Peek、キーボード)や、カーマイン・アピス(Carmine Appice、ドラムス)もいるにはいるが、残りの3人は(上記フィル、ジムのほかゲイリー・グラインジャー(Gary Grainger、リードギター、元ストライダー(Strider)))ブリテンから彼が同行したメンバーであり、意外とこの曲などでもリズムの骨格を彼らが演出している、ということだ。彼はアメリカに渡っても、ローリング・ストーンズに去ったロン・ウッド、先に脱退したロニー・レーンと離れても、表現したいリズムの根幹を、ブリテンのミュージシャンと作っていたのだ。実は、自分が表現したいことを守り、彼は商業主義=資本主義に魂を売っていない。私はこのアルバムを国立ディスクユニオンで、100円で買い、じっくりと聴いた10年前、そう気付いた。証拠としてロッドの現在の活動は、初期の彼の活動に近いものになっていると思う(今でも100円で買えると思う)。




 半田君は自分がライダーファンの所為もあって、仮面ライダー555のお別れ会(@中野サンプラザ)で彼の涙を見たものとして、また、彼が1970年代日本歌謡曲のマニアであり、ものすごい高層ビル通(タモリ倶楽部にも出たんじゃなかったけな)であることからも、全面的に大好きな男性タレントである。応援している。私と同じ、兵庫県出身だし。「決して彼は卑劣なナンパをする男じゃない!」とオッサンが叫んでも本当にバカだと思われるだけだろうと思っている。が、彼も仕事なく、しょうがなく”井上真央をナンパするバーテン”を演じているのだ。




 たまたまの運命で、それ以外仕事がなくて、しょうがなく演じてしまっている記号というものがあるのだ。「小さな椅子に腰掛けてふんぞりかえっている」(大意。宮沢賢治から引用)奴らは一生解るまい。セックス・シンボルという記号を演じている両者(ロッドと半田君)の痛みが何となく伝わってきて、悲しい気持ちになった。資本主義社会で振り回されている論理とか「当たり前のこと」って実はどうでもよくて、表現の土壌なり、衝動、テーマというのは実は別のところにあったりする。たとえばJASRAC職員も、仕事のため、仮の姿として、”一音楽ファン”のブログを弾圧したりするのだろうが、その背景の”彼 or 彼女”の人格を決して誤解してはならないだろう。弾圧は嫌々やっていることなのかもしれない。自分は、更々”セックス・シンボル”を演じる素養を持ち合わせている人物ではないのだが。そんな風に思うのもおかしいだろうが。ただソレ(=重そうなものが実は軽いこと)が言いたかっただけです。すみません。




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#「?」マークがウザイと思っている方すみません。はてな市民になった暁(30日間連続して日記を書くことが必要)にガンガン解説します。